活動記録

上海「ブリしゃぶフェア」でのアンケート調査解析結果

2015.12.16

海外

本解析結果は、2月に上海で実施した「ブリしゃぶフェア」において来店の消費者より回収したアンケートを集計解析したものである。

1.「ブリしゃぶ」に関する消費者の反応

上海で実施したアンケートにおいては、各質問事項で現地日本人消費者と日本人以外の消費者で回答に差異が見られたため、本解析においても日本人消費者と日本人以外の消費者に分けて集計した結果に基づいて解析を行った。今後の輸出対策を考える上では、現地の日本人以外の消費者を対象とした対策は消費量の拡大につながる可能性が高いと考えられるためである。

「ブリしゃぶ」は養殖ブリを刺身や寿司などのほか、照り焼きなど既存の調理法以外に、新たな料理の食材として提案し、消費拡大を図ることができるとの推定に基づくものである。

「ブリしゃぶフェア」で提供した「ブリしゃぶ」の味について「とてもよい」から「美味しくない」までの4段階で質問した(Q4参照)。「とてもよい」と高評価の回答をした日本人消費者は48%と約半数を占め、「まあまあ」というやや消極的な評価まで含めると90%が好意的な評価であり、「ブリしゃぶ」は日本人消費者には受け入れられるものであることがわかる。これに対して、日本人以外の消費者では「とてもよい」という評価は34%に留まり、「今ひとつ」と「美味しくない」を合わせた評価は約20%と日本人消費者の2倍近くに達している。今回提供した「ブリしゃぶ」が日本以外の消費者に積極的に受け入れられるまでには、改善の余地があると考えられる。「今ひとつ」と「美味しくない」と感じた理由については、質問していないため具体的な対策を論じることはできないが、刺身や照り焼き等で提供した先のアンケートにおいて、高評価を得ていたことを考えると養殖ブリの品質や鮮度に起因するものではないと考えられることから、つけダレ等の工夫をすることが必要なのかもしれない。

Q4 ブリしゃぶの味(日本人:143人、日本人以外:222人)

ブリの新しい食べ方としての「ブリしゃぶ」の提案を行ったわけであるが、消費者がブリの食べ方についてどのようなイメージを持っているのかを質問した(Q5)。

日本人消費者は刺身と寿司を合わせた鮮魚としての食べた方が約50%、ブリの照り焼きに象徴される焼き物とブリ大根などの煮物が合わせて約50%と、従来から我が国で消費されるブリの食べ方が反映された結果と考えられる。鮮魚としての消費では刺身が43%と圧倒的であり、寿司ネタとしてのブリをイメージするのは5%しかいなかったのは意外である。日本人以外の消費者では刺身と回答した消費者は43%で日本人と同じ割合であったが、寿司と回答したのは約20%と日本人消費者の4倍の割合であった。ブリの鮮魚としての食べ方として日本人以外の消費者には寿司のイメージがあることから、外食店での消費に、寿司ネタとして加工したものを現地の寿司店に売り込むなどの方策をとることは有効かもしれない。また、日本の養殖技術で生産された高鮮度、高品質の養殖ブリは刺身や寿司で食べるとおいしいというアピールをしていく従来の方針は堅持するべきであると考えられる。一方、焼き物、煮物をイメージする割合はどちらも15%前後で日本人消費者よりも10%程度低く、その一方で、我々日本人がイメージしにくい揚げ物をあげている日本人以外の消費者が4%存在したことは、日本人以外の消費者の食文化が反映された結果と考えられ、ブリの食べ方として、ブリの照り焼きに象徴される焼き物、ブリ大根に象徴される煮物について日本の古くからの食文化としてストーリー性を持たせた普及を考えていくことも必要である。

Q5 ブリの食べ方(複数回答)

2.魚食の普及およびブリの消費拡大に向けた意識

好きな水産物を複数回答で質問したところ(Q6)、日本人消費者ではマグロが約半数を占め、次いで、ブリ、サーモンの順であった。これに対し、日本人以外の消費者ではサーモンが38%と第一位で日本人消費者の約4倍であった。マグロ、ブリと回答した消費者はそれぞれ日本人の約半数であった。今後の養殖ブリの普及を考える際に、競合品としてサーモンを念頭にサーモンよりもおいしい、あるいは、サーモンにない特徴があるというアピールポイントを探し、サーモンよりもブリを好む消費者を増やしていくにはどうしたらよいかを考える必要があるように思われる。

水産物を食べる理由についての回答では(Q7)、回答の選択肢のうち、「美味しいから」と「肉より魚が好き」、「健康によい」と「肉より魚が好き」、はそれぞれ相通じるところがあるように思われ、解釈が難しい点がある。総じて、日本人消費者は水産物の美味しさに惹かれて水産物を消費する傾向があると考えられる。日本人以外の消費者は水産物の美味しさを日本人ほどわかるところまでは行っていないが、少なくとも、健康への良い影響をアピールしていけば、水産物を消費するきっかけになり得る。更に、健康への良い影響を期待して食べてみると、意外に美味しいという流れを作れれば、安定的に水産物を消費する市場になっていくことも期待できる。今後の方針として、「中国に水産物消費市場を育成していく」という考え方のアプローチを模索しても良いのではないかと思われる。

Q6 好きな水産物(複数回答)

Q7 水産物を食べる理由(複数回答)

普段水産物を食べる場所(Q8-1)は日本人消費者と日本人以外の消費者で大差はなく、60%以上が外食店で水産物を食べており、自宅で食べる消費者は30%程度であった。このことから、輸出対策の方針としては、現地の外食店で食材として使用されるには何が求められているのかを把握し、需要に応じた品質、量を適時に供給する方法を検討していくことが重要であると考えられる。

自宅で水産物を食べる消費者の購入先はスーパーや市場・魚屋であるが、品質管理の点から高品質・高鮮度の魚を輸出しても消費者の段階でそれが維持できているかどうかに疑問が持たれるため、当面、外食店を対照とした消費拡大策を構築することを優先し、次の段階として、外食店以外への供給方法、消費拡大策を模索していくことが有効な手段ではないかと考えられる。

Q8-1 普段水産物を食べる場所(複数回答)

Q8-2 水産物の購入先(複数回答)

3.日本産水産物のイメージ

現地消費者が持っている日本産水産物のイメージを知ることは、輸出拡大に向けたアピールポイントを考える上で重要である。「新鮮」、「高品質」のイメージは日本人消費者、日本人以外の消費者ともに70%を超えており、日本産水産物のポジティブなイメージとして今後も維持していくことはもちろんであるが、イメージとして終わらせるのではなく、なぜ新鮮なのか、なぜ品質が良いのかということを日本の技術と合わせて現地消費者に説明、納得してもらう方策をとることが必要ではなかろうか。その説明があり、実際に品質も良いと評価されれば、「日本産の水産物は高くてあたりまえ」、「多少値段は高くても日本産を食べたい」と思わせることにつながる。価格についての「高い」というイメージは、今後の現地でのセミナー等で「どれくらいまでの価格であれば日本産水産物を消費したいか」という許容範囲を調査することで「品質に見合った価格設定」という状況を生み出す必要がある。サーモンが好まれる水産物の第1位であり、ブリの競合品として考えた場合、サーモンと価格面での競争をすることは無意味である。先にも述べたように、サーモンにない特徴としての鮮度、品質、食べ方を重視し、消費者が納得できる適正価格で供給する方針に沿った施策を考えていくべきではないかと思われる。

Q9 日本産水産物のイメージ(複数回答)

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