上海「ブリしゃぶフェア」でのアンケート調査解析結果
2015.12.16
2.魚食の普及およびブリの消費拡大に向けた意識
好きな水産物を複数回答で質問したところ(Q6)、日本人消費者ではマグロが約半数を占め、次いで、ブリ、サーモンの順であった。これに対し、日本人以外の消費者ではサーモンが38%と第一位で日本人消費者の約4倍であった。マグロ、ブリと回答した消費者はそれぞれ日本人の約半数であった。今後の養殖ブリの普及を考える際に、競合品としてサーモンを念頭にサーモンよりもおいしい、あるいは、サーモンにない特徴があるというアピールポイントを探し、サーモンよりもブリを好む消費者を増やしていくにはどうしたらよいかを考える必要があるように思われる。
水産物を食べる理由についての回答では(Q7)、回答の選択肢のうち、「美味しいから」と「肉より魚が好き」、「健康によい」と「肉より魚が好き」、はそれぞれ相通じるところがあるように思われ、解釈が難しい点がある。総じて、日本人消費者は水産物の美味しさに惹かれて水産物を消費する傾向があると考えられる。日本人以外の消費者は水産物の美味しさを日本人ほどわかるところまでは行っていないが、少なくとも、健康への良い影響をアピールしていけば、水産物を消費するきっかけになり得る。更に、健康への良い影響を期待して食べてみると、意外に美味しいという流れを作れれば、安定的に水産物を消費する市場になっていくことも期待できる。今後の方針として、「中国に水産物消費市場を育成していく」という考え方のアプローチを模索しても良いのではないかと思われる。
Q6 好きな水産物(複数回答)
Q7 水産物を食べる理由(複数回答)
普段水産物を食べる場所(Q8-1)は日本人消費者と日本人以外の消費者で大差はなく、60%以上が外食店で水産物を食べており、自宅で食べる消費者は30%程度であった。このことから、輸出対策の方針としては、現地の外食店で食材として使用されるには何が求められているのかを把握し、需要に応じた品質、量を適時に供給する方法を検討していくことが重要であると考えられる。
自宅で水産物を食べる消費者の購入先はスーパーや市場・魚屋であるが、品質管理の点から高品質・高鮮度の魚を輸出しても消費者の段階でそれが維持できているかどうかに疑問が持たれるため、当面、外食店を対照とした消費拡大策を構築することを優先し、次の段階として、外食店以外への供給方法、消費拡大策を模索していくことが有効な手段ではないかと考えられる。
Q8-1 普段水産物を食べる場所(複数回答)
Q8-2 水産物の購入先(複数回答)
3.日本産水産物のイメージ
現地消費者が持っている日本産水産物のイメージを知ることは、輸出拡大に向けたアピールポイントを考える上で重要である。「新鮮」、「高品質」のイメージは日本人消費者、日本人以外の消費者ともに70%を超えており、日本産水産物のポジティブなイメージとして今後も維持していくことはもちろんであるが、イメージとして終わらせるのではなく、なぜ新鮮なのか、なぜ品質が良いのかということを日本の技術と合わせて現地消費者に説明、納得してもらう方策をとることが必要ではなかろうか。その説明があり、実際に品質も良いと評価されれば、「日本産の水産物は高くてあたりまえ」、「多少値段は高くても日本産を食べたい」と思わせることにつながる。価格についての「高い」というイメージは、今後の現地でのセミナー等で「どれくらいまでの価格であれば日本産水産物を消費したいか」という許容範囲を調査することで「品質に見合った価格設定」という状況を生み出す必要がある。サーモンが好まれる水産物の第1位であり、ブリの競合品として考えた場合、サーモンと価格面での競争をすることは無意味である。先にも述べたように、サーモンにない特徴としての鮮度、品質、食べ方を重視し、消費者が納得できる適正価格で供給する方針に沿った施策を考えていくべきではないかと思われる。
Q9 日本産水産物のイメージ(複数回答)