上海日系料理店4店舗における消費者セミナー 出張報告
2015.12.10
1. 実施日:
2015年12月10日~16日
2.実施店:
「竿屋1号店」、「合点承知之助寿司 中山公園店」、「蟹の岡田屋」、「岳」
3.試食魚:
冷凍ブリフィレ-(アルコールブライン凍結)
▲「合点寿司承知之助」アンケート用寿司と刺身(血合いカット)
▲「岳」アンケート用刺身(血合い有り)
▲「蟹の岡田屋」アンケート用のブリ照り焼き
4.実施方法:
冷蔵庫による解凍をA、流水による解凍をBとして、生食又は加熱食で来店者に試食アンケートを行う。
5.目的:
ブリの市場としては魅力的ではあるものの鮮魚流通の障壁が高い中国において、今後輸出を伸ばすためには、鮮魚だけではなく冷凍品の市場も必要である。そこで、品質面で生鮮に劣らない、生食用でも通用する冷凍ブリの冷凍・解凍技術について、冷凍品質WG内で検討を行い、緩慢解凍・流水解凍の異なる解凍方法により、肉質や色調など品質に差がある冷凍ブリを現地消費者に提供する事により、現地消費者の嗜好性や品質についての寛容性を調査した。
6.各店との打ち合わせ:
12月10日に各店舗の代表者にセミナーの趣旨を説明し、ご協力の御願いに伺った。各店の日本人料理長、オーナーから輸出について、下記のような意見・アドバイスがあった。
・日本産の魚なら品質が良いのは当たり前なので、あとはこちらが売ろうと思えばいくらでも売れる。
・ブリは照り焼き等の切り身で出すと単価合わなくなるので、お店で扱うなら刺身で出したい。
・色変わりしないカンパチの方が良いのではないか。
・くん液を注入した冷凍ブリを日本で見たことがあるが、色変わりせずとても良かった。
・安価な冷凍の天然ブリが出回っているので、焼き物はその天然物で十分。ただ、中国人も本物志向が強まっているので、刺身は品質の良いブリが欲しい。
7.現地保管温度とサンプルについての反応:
現地冷蔵庫では、1日の温度差が激しく、営業時間中は4~9℃、閉店後は2℃まで下がるとの事だった。店舗によっては、冷蔵庫の温度設定を0度以下に調整し、0~2℃の半シャーベット状となるようにしている店もあった。また、事前にサンプルを渡していた店舗では、解凍後の血合い肉色が黒ずんでいる事や、解凍時のにおいが気になる事から、生で提供する事は出来ないといったお店もあり、加熱のみの提供となった店舗もあった。
8.アンケート結果:
アンケート結果は現在とりまとめ中の為、次回の生鮮・冷凍水産物輸出促進委員会及び冷凍品質ワーキンググループで報告し、今後の方向性を検討する事とした。
所感として、品質については、緩慢解凍、流水解凍とも血合い部分の褐変が目立った。また、指定した同じ解凍方法でも店舗やフィレによって身質、血合いの変化にバラツキがあるようで、中には解凍してすぐの提供ならば、生食でも血合いの色が全く気にならないような品質の魚も見られた。生食か加熱かの違いや、店舗における解凍時の温度によってアンケート結果には違いがあるようにも見えたが、しかし嗜好性や味の好みは個人によってバラツキがあり、AとBどちらの解凍方法が良いとは一概には言えない結果であった。ただし、「魚を食べる時に一番気になるのは何ですか?」との問いに対し、55%と最も多かった回答が「新鮮度」で、次に味(31%)、価格(9%)、魚の種類(5%)と続いた事から、今回のような日系料理店に訪れる現地消費者は、価格よりも鮮度や品質の良さを最も求めている事が予想された。
9その他:
・日本では安価な白ミル貝が、中国では220元(約4400円)するなど高級で、ホッキ貝など旨みと食感が良い貝類の人気がある。
・キンキの塩焼きを600元(約12,000円)で販売しても一日に25食を売れたりするお店もあるという。
・ハタ科の魚は高級魚でとても人気なので、養殖のマハタを持ってくるのも良いと思う。
・「蟹の岡田屋」はオープン3~4ヶ月で飲食サイトの日本料理店で人気ランキング1位になっている繁盛店だが、客層は98%が中国人。現地でもお店選びは飲食情報サイトの口コミでの評価を参考にしている客が多い。
・デパ地下では、生食ではサーモンが大半、他はマグロやエビ、カンパチ、マダイが陳列されていた。ブリと書かれた刺身(身に黒いスジが多数あり)もあったが、産地、養殖かは不明。加熱用の魚は、ハタ科の魚(アオハタ、タイガーグルーパー、スジアラ)、銀ダラ、マナガツオ、黄ニベ、他には淡水魚が多く売られていた。長崎産の冷凍マナガツオがあったが、380元とかなり高価。
▲「高島屋」長崎と北海道産の鮮魚、冷凍品が売られていた
・アピタでは、東町漁協のブリを鮮魚(ラウンド)で仕入販売し、週末は解体ショーをその場で行っている。このブリブースだけで2~300万円/月の売り上げはあるとの事。切り身、刺身、寿司で販売していた。刺身をサーモンとのハーフアンドハーフでセットにして売ったり、売れ残り切り身を加工して惣菜コーナーに回す等、他の店舗と比べて売り場作りの工夫が強く見られた。同店の客層は8割が中国人。
▲「アピタ」鮮魚売り場前にある鰤王の販売ブース
▲「アピタ」寿司はサーモンと抱き合わせでも販売している。